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平成28年熊本地震
「平成28年熊本地震」は、東日本大震災とならび、近年最大規模の地震であり、余震の回数も観測史上最多となり熊本県内に甚大な被害をもたらしました。
お亡くなりになった方々に謹んで哀悼の誠を捧げ、また被災をされたすべての方に心よりお見舞いを申し上げます。
岡本シンホウ産業では、特に被害の酷かった上益城を中心に全力で復旧工事に取り組んでまいりました。
施主様のご協力とご理解の元、被害の酷いお客様より手掛けさせていただき、北は北海道から南は鹿児島まで日本全土から応援して頂いた30名にも超える有志の方々のおかげで応急工事を含む約9割近くの復旧工事を終える事が出来ました。
これもご理解と信用して頂いた多くのお客様と、ご協力いただいた有志の方々のお陰と心より感謝申し上げます。
しかしまだ一部の大規模の葺き替え工事をお待ち頂いてるお客様には大変ご不便をおかけしております事を心よりお詫び申し上げます。
熊本地震での瓦屋根被害状況と被害の特徴、震災での対応方法と地震対策について
全瓦連青年部西日本ブロック大会で、熊本地震での瓦屋根の被害状況と被害の特徴、 私が行ってきた震災での対応方法についてお話しする機会をいただきました。 この先起こりうる大震災に備える為、地震対策と大震災後の対応方法など、 少しでも皆様のお役に立てればと思い講演会の内容を一部記載させていただきます。
第1章-熊本地震の概要・詳細
熊本地震は日奈久断層と布田川断層の接合部の付近で起こった断層の右横ズレによるものと言われています。
前震での震源地は私の会社から直線距離で2キロ程度しかない御船町と推定されており、日奈久断層が動いたとされ、
マグニチュードは6.2でした。
ほとんどの方が初めに揺れた地震が本震と思い、一旦避難していましたが自宅に帰った二日後に本震がきてしまいました。
それが尊い命を奪う1番の原因となりました。
14日に前震、16日の深夜に本震がきてほとんどの方が家屋に入れず、それからしばらくは車中泊の生活でした。
ご存知かとは思いますが、余震の回数も気象庁観測史上初の2000回を超え、6ヶ月経っても余震が続いていました。
*2016年10月11日、気象庁発表による熊本地震の余震回数の修正がありました*
4月14日から10月10日に観測された震度1以上の地震が計4081回で従来より約2倍に増えました。
修正前から増えた1944回の地震の大半は4月に起きていて、特に2回目の震度7が起きた4月16日は1223回と修正前の約6倍に増えています。
増加分の94%は震度2以下の揺れでしたが、震度5弱以上も4回ありました。
日奈久、布田川断層と共に九州には阿蘇を中心に別府島原地帯層があります。
16日に別府で県内最大の震度6弱を記録した震源地です。
九州でおこった過去の大地震は、1300年前に679年に浮羽市から久留米市に至る水縄(みのう)断層帯で
マグニチュード7、100年前の1909年熊本・宮崎の県境、人吉南緑断層でマグニチュード7.6があったと記録されています。
特に九州では1990年の雲仙噴火を皮切りに3つの火山が活発に動いています。
そのため、断層もしかりプレート自体が動いていると考えられ、日本全土が活動期に入ったと言われています。
この3つのプレートの間にある日本は活火山の集まった国で、活火山の数は全世界の活火山の7パーセント占めると言われています。
第2章-熊本地震の被害状況-
益城町では悉皆(しっかい)調査(すべての建物の調査)がありました。
各市町村でも被害認定調査が行われました。
それにより全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊と4つの区分に分けられます。
その結果で自治体より罹災証明が発行されます。
震度7の益城町では、35年以前の旧建築基準法で建てられた家の半数が半壊以上となり、
問題なのは1981年の新耐震基準後でも約2割で半壊以上になったと言う事です。
次に、屋根以外の被災状況も見ていただきたいと思います。
御船益城インター間の高速の橋脚です。
次の写真は益城に流れている秋津川と木山川周辺ですが、道路の亀裂は特に酷く大きな被害を受け、 堤防の亀裂が100箇所以上確認され、堤防決壊の危険性がありました。この先の橋の高低差は50センチを超えていました。
擁壁も石積みはもちろん、建置ブロック、L型擁壁に至るまで、大きな被害を受けました。
地震で地盤が緩んでいるのと同時に豪雨被害も重なり、特に上益城郡では各地で土砂崩れも発生しました。
私が住む甲佐町では震災から2ヶ月後となる6月21日には、国内観測史上4位(2016年6月1日現在)に入る1時間150mmの大雨をもたらしました。
益城では電気も通らず、主要な交差点では警察官が誘導していました。
次に全壊の画像を見ていただきたいと思います。
震災後、最初の一週間は現場調査をしながら、上益城の被害状況を実際に自分の目で見て回りました。
今回の地震で前日まで普通に生活されていた方々が1日で家を無くし、人生が激変した方が大勢いらっしゃったのは言うまでもありません。
全てのものを根こそぎ奪っていく地震の怖さを思い知りました。
新しく葺き替えしてある家の屋根瓦はほとんど崩れることなく、倒壊した屋根にそのままのっていました。
それを見た時には呆然としてしまい心が痛みました。
もしもの時の震災に備えて、見積もり時に北回りや水周りの柱の状態だけでもしっかりと確認しておくべきだと強く思いました。
リフォームをする時には躯体の耐震性能を確認して軽量化を進めるのが大切だと痛感しました。
特に倒壊が多く見受けられた箇所を見ていただきたいと思います。
先ずは盛り土の上に建っている家と山間部の中腹にある家です。
壁量や筋交いの少ない小屋、最後に土壁や土瓦の築年数の古い家になります。
第3章-熊本地震での屋根の被害状況・被害の特徴・対応方法
先ず震災が来て被害が甚大な時、最初に必要となってくる対応はシート養生になります。
震源地周辺にある私の会社では、シート養生の依頼が一日に数百件以上、問い合わせが殺到し対応に追われました。
シート養生に関しては、とにかく自分達や周辺住民と協力し合って対応していただくしかないと判断しました。
必死にシート張りをしていると、よく忘れがちになるのが補修される際の業者の見積もりや
各自治体が行う被害認定調査や地震保険等の時に必要となってくる被害状況の写真です。
被害状況の写真がないと後々大変困りますので、必ずお撮り忘れのないようにお願い致します。
シート養生をする際には、できるだけ壊れた棟やガレキを取り除き、シート量を減らす工夫が必要となります。
これが震災時に適用される応急修理となります。
ガレキを乗せたまま養生してあるとシートは破れ、余震で危険な状態が続きます。
そして次に、長期間のシート養生で大切なのが、3000番以上の厚手のシートやUV加工されたシート、
UV土嚢や切れにくい組紐を使用することです。
*長期間のシート養生を可能にする
工夫と材料選びについてはこちら*
それでは実際に屋根の被害状況に入ります。
棟が壊れ落ち、下の瓦を破損させる建物被害が大多数です。
台土に粘土を使った施工では、ほとんどの家で重大な被害が出ています。
また熊本は棒積みしてる瓦屋も多く、これも多くの被害が出ました。
そして、セメント瓦は空葺きが殆どで半瓦の固定もなく根こそぎズレています。
仮に半瓦を固定して南蛮漆喰を使用し、全線結束してある棟も、横に縦に滑ってズレています。 軸方向の補強がどれだけ大切か分かる写真です。
先ず基本は半瓦の固定と言うのもよく分かる一枚です。
1枚目の写真の下り棟はモルタルで取ってあるのですが、見事にせん断しています。
棟の重量は地震の前では無力だと思い知らされました。
次に雨切り半瓦固定無しの写真です。
右は壁からの引かせがなく面土ごとバリ出しています。
社寺も相当数の被害があり、納骨堂のRC作りや鉄骨造りの振動の伝わりやすい物件も大きな被害を受けています。
第4章-ガイドライン工法
ここからは専門的な内容になり少々理解しにくいと思いますので、ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
施工される際は業者に頼んで施工前、施工状況、施工完了の写真を必ず撮ってもらい、
耐震施工ではない簡素的な施工(震災後は消費者センターに問い合わせがあるように、悪徳な業者が県内外と
増えます)をされないようにご注意下さい。
*震災時に多発する悪徳商法・詐欺と実際に発生している事案と案件の内容はこちら*
震災後の工事では安全対策が非常に重要になってきます。
震災被害での復旧工事には屋根屋以外も屋根に登る機会が多く、補修物件の危険箇所には面足場が必要になってきます。
大震災後には足場も含めて機材等が不足し3ヶ月待ちになることもありますが、
足場が不足しているから、緊急事態だからといって安全対策を疎かにし事故を起こさないように、
通常作業でも同じですが、工事を行う上での安全対策はどんな状況であっても必ず徹底して行って下さい。
大震災という異常事態の時には、仕事に限らずみんなで協力し、
お互いが助け合い支え合う事でしか切り抜ける方法はないのだと痛感しました。
類を見ない余震の中、どれだけの方が住み慣れた自宅で安心して過ごす事が出来るのか。
どうすれば被災された多くの方を救えるのか。
震災以来このことばかりを考えて来ました。
とりあえずのシート養生を、工務店、足場屋さん、ご主人や息子さん、従兄弟などの男手、近隣の消防団、
ありとあらゆる所に頼んで手伝っていただきました。
そして崩れた棟瓦や破損した平瓦は工務店に降ろしてもらい、平部は工務店になるべく葺いてもらいシート量を減らしていただきました。
そして自分は緊急を要する所から、優先順位や施工手順、施工方法、材料の手配を行い、
現場ではその応急工事を親綱と安全帯をつけてなるべく動きが少ないようにクレーンを使い工事を進めました。
台風シーズン前ということもあり急ぎの物件は、工務店、左官、塗装屋さんに乾式工法を教えて自分達で7丸施工をしてもらっていました。
一度震災が起これば、コロニアルやせっぱんなどの軽量化、平板瓦などの簡素化、
そして新築も瓦職人不足も合間って在来工法での和型の家が極端に減ります。
西日本では台風や火山灰と言った特殊な状況があるので、この板金・コロニアルの軽量化の影響が出てくる可能性もあるかもしれません。
今後は全瓦連でも直下型の揺れに対するさらなる研究改良や、地震による家の形状(屋根の形状)との因果関係、
今回剛体の在来工法で多くの被害が出たなら、風に強くそれでも柔軟性に富んだ屋根作りが出来ないか等も、
研究改良が進みこれからの新しい未来の屋根を作る礎を作り上げて行けたらと切に思います。
以上になりますが、今後とも皆様方の惜しみない御協力とご指導をお願い致します。